動画でCVRが上がるという話、最近よく耳にします。
うちはSNS動画ゼロでした。テキスト・画像・ブログ中心でやってきて、動画には手を出してこなかった会社です。それでも周りの空気が変わってきたので、いい加減やってみるかと始めました。
ただ、動画制作のためだけにテンプレ動画SaaSを増やすのは避けたかった。サブスク行が増えるし、テンプレが他社と被るのも嫌だった。結果として 動画をコードで書く という選択肢に行き着きました。Reactベースの動画ライブラリ Remotion を使って、自社2プロダクト(Shift Bud と Ima.)の動画制作を立ち上げています。
一方は5週間で27本量産、もう一方は1日で4本のコンセプト動画。正反対のパターンが、同じ仕組みで両方回せています。「動画を始めるか迷っている会社」に向けて、実際の数字とコスト・向き不向きを正直に共有します。
動画SaaSを増やさなかった3つの理由
最初の候補はテンプレ動画SaaS(Canva / CapCut / Veed系)でした。1本作るのは早いし見栄えもいい。ただ3つの理由で見送りました。
- サブスク行が増える — 月数千円でも、増やした分だけ管理・請求・アカウントが積み上がる
- テンプレが他社と被る — SNSタイムラインに同じテンプレの動画が並ぶ光景はすでに珍しくない
- 資産にならない — SaaSを乗り換えたらテンプレは消える。社内に蓄積されない
代わりに、Reactで動画コンポーネントを書ける Remotion というOSSライブラリで内製化することにしました。
2パターンの運用実績
パターンA: SNSリール量産(Shift Bud)
Shift Bud は美容室向けのAIシフト管理SaaSです。Instagram・YouTubeリールを5週間で量産しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 約5週間(2026-02下旬〜03下旬) |
| 動画コンポーネント | 19本(基本2本 + リール6本 + フォーマット11本) |
| レンダリング済 | 22本(mp4 + webm) |
| YouTube公開 | 27本 |
| SNS配信 | スケジューラ経由で44アセット |
フォーマットは5種類(Educational / あるある / 警告 / Before-After / POV)。コードで定義してあるので、テキストとカラーを差し替えるだけで新作が出力できます。1回作ったフォーマットは社内資産として残り続ける のが、SaaSとの最大の違いです。
パターンB: コンセプト動画の集中制作(Ima.)
Ima. は家族の食事中にスマートフォンをシールドするアプリです(App Store 公開準備中、UX思想はこちら)。X向けコンセプト動画を4本構成で作りました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制作期間 | 約30分の集中制作 |
| 動画コンポーネント | 4本(コンセプト + Part 2〜4) |
| レンダリング済 | 4本(mp4) |
| 配信 | 手動投稿(自動化なし) |
こちらは量産ではなく、1つのメッセージを4本のシリーズに分けた構造です。
同じ仕組みで両極端のニーズに対応できた
量産型(A)と単発型(B)が 同じコードベース・同じツール一式で動いている ことが重要です。性質が違う2プロダクトで再現できたので、運じゃなくて仕組みとして使える、と判断できました。
コスト構造
| 項目 | 月額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| Remotion | 0円 | OSS(独自ライセンス。3名以下の企業は無償利用可) |
| Claude Code Max サブスク | 約3万円($200) | 動画制作だけでなく開発全般で使用 |
| 動画ホスティング | 0円 | YouTube・SNSプラットフォーム |
| SNSスケジューラ | 数千円 | 既存運用ツールの延長 |
Claude Code Max サブスクは前提として計上しています。これは動画制作専用ではなく、コーディング全般で使っているサブスクの一部です。動画のために新規追加したものではないので、按分すれば実質負担はもっと小さくなります。
参考として、もし動画SaaSで揃えていた場合、相場感としては月2,000〜20,000円が乗ってくる計算でした。年換算で2万〜24万円のサブスク行を増やさずに済んだ、というのが経営インパクトとして大きい部分です。
向き不向き
向く会社
- 同じテンプレで動画を量産したい(リール・ガイド・解説など)
- React・TypeScript を書ける人が社内にいる
- 自社プロダクトを持っていて、動画を継続的に出していきたい
- ブランドガイドラインを動画にも適用したい
向かない会社
- 1本だけのプロモ動画でいい(学習コストが見合わない)
- 実写映像が中心(俳優・撮影・編集が必要なジャンル)
- 社内に React を書ける人がおらず、外注も視野に入れたくない
- お金は気にしないので、バズる動画の知見を持つ会社に丸投げしたい
最後の項目は強調しておきたい点です。Remotionは「動画を作る」問題を解きますが、「動画をバズらせる」問題は解きません。
コードで動画を量産できるようになっても、何を撮るか・どう構成すれば刺さるか・どのタイミングで投稿するか、というコンテンツ側の研究は別に必要です。「動画クリエイティブの知見」と「動画制作の仕組み」は別物で、後者をRemotionで自前化したからといって前者まで自社化できるわけではない。
バズらせる動画を最短で作りたいなら、知見を持つ会社に依頼するほうが早い場合があります。Remotionが効くのは、やり方が決まっている動画を量産するフェーズ か、自社で試行錯誤するコストを下げたいフェーズ です。
まとめ
- 動画を始めるなら、SaaSを増やさずコードで書く選択肢がある
- 自社2プロダクト・量産型と単発型の両方で機能した
- 月額コストの大半は Claude Code Max(動画専用ではない)
- バズらせる研究は別。Remotionは制作の問題を解くだけ
- React が社内にあって、続ける気がある会社に向く
このシリーズではRemotion運用の各論を毎日1記事ずつ掘り下げます。明日からの公開予定:
- 動画を内製化するか迷ったら考える3つの問い(採用判断)
- SNSリールを5フォーマットでテンプレ化する設計(量産編)
- X向け縦動画をシリーズ4本構成で作る(単発編)
- 動画制作コストの本当の内訳(経営判断)
- Remotionで最初の動画を作る前にやっておくこと(入門)
- Claude Code に動画コードを書かせる実践(AI連携)
- Remotionで動画を作って学んだ落とし穴(落とし穴集)
公開ごとにこの記事の関連リンクに追加していきます。
関連リンク
- Shift Bud(美容室向けAIシフト管理)公式サイト・無料で試す
- Shift Bud デモ画面
- Ima.(家族の食卓向けスマホシールドアプリ)公式サイト(App Store 公開準備中)
- Ima. のUX思想 — 強制より合意が効く理由
動画制作で迷っている方は、ツール選定の前に「自社にとって本当に動画が必要か」「どんな動画にするか」から一緒に整理することもできます。気軽にご相談ください。



