動画制作の内製化を決めたとき、最初にやりがちな失敗が「いきなり1本目を作り始める」ことです。
なんとなく1本目は形になります。けれど2本目を作るときに「どのフォントを使ったっけ」「ロゴの位置どうしてたっけ」「尺は何秒だったっけ」と毎回ゼロから悩む。これが、量産が止まる最大の原因です。
うちが動画制作を立ち上げたときは、制作に入る前に5つのことを決めました(このアプローチを取った経緯は SaaSを増やさず自社2プロダクトのSNS動画を作ってみた話 に書いています)。決めた直後はオーバーキルに見えますが、2本目以降のスピードが全く違います。
この記事では、動画を作り始める前にやっておく準備を整理します。前半は経営・マーケ判断、末尾に実装担当向けの補足を付けています。
動画を始める前に決めておく5つのこと
最初に決めるべきことは5つです。それぞれは数分で決まりますが、決めずに始めると後で手戻りが発生します。
1. ターゲット視聴者
「誰に見てもらいたいか」を1行で書きます。「美容室のオーナー」「Reactを触ったことがあるエンジニア」「30〜40代の共働き世帯」など、具体的に。
ターゲットが決まると、その後の判断(言葉づかい / フォント / 速度 / 色のトーン)が自動的に絞れます。
2. 動画の用途
SNS配信用なのか、プロダクト紹介ページ埋め込み用なのか、社内研修用なのか。用途で再生環境が変わります。
- SNS配信: 縦動画、音声なし、15〜30秒
- プロダクトページ: 横動画、音声あり、30秒〜2分
- 社内研修: アスペクト比は自由、音声あり、長尺OK
3. フォーマット(解像度・アスペクト比)
縦動画なら 1080×1920 (9:16)、横動画なら 1920×1080 (16:9)、Instagram投稿なら 1080×1080 (1:1) というのが基本です。
Remotion ではコンポーネントごとに解像度を変えられますが、シリーズで揃えるなら最初に決めておきます。後でアスペクト比を変えると、テキストレイアウトを全部書き直すことになります。
4. 1本あたりの目標尺
15秒・30秒・60秒のどれを基本にするか。長すぎると最後まで見られないし、短すぎると伝わらない。
SNS配信なら 15〜30秒、解説動画なら30〜60秒が現実的です。最初に決めた尺にコンポーネントを合わせて設計します。
5. 連投する本数の見込み
「これから何本作る予定か」を見込みで書きます。10本くらいなのか、50本以上なのか。
本数の見込みで、テンプレ化の粒度が変わります。10本ならテンプレ1〜2種で足りるけれど、50本以上なら3〜5種類のフォーマットを用意したほうが運用が楽になります。本数判断の前段は 動画を内製化するか迷ったら考える3つの問い を参考に。
ブランドガイドラインの最低限
5つを決めたら、次に決めるのはブランドガイドラインです。プロダクトのブランドガイドラインがすでにあれば流用、なければ動画用に最低限を作ります。
| 項目 | 最低限決めること |
|---|---|
| 主要カラー | 2〜3色(メイン / アクセント / 背景) |
| フォント | 1〜2種(見出し用 / 本文用) |
| ロゴ | 配置位置と表示時間(冒頭 / 末尾 / 全編) |
| BGM | 使うか使わないか、使うなら音源リスト |
| トーン | 真面目 / カジュアル / 軽妙 のどれか |
これらを「ブランド定義」として1箇所にまとめておきます。社内のドキュメント1ページでも、後述する実装担当者がコードから参照する設定ファイル1本でも構いません。1箇所に集約しておくと、後で色を変えたいときも書き換えはそこ1つで済みます。
1本目を作るときの心構え
ここまで準備したら、いよいよ1本目です。1本目で気をつけることは3つだけです。
完璧を狙わない 1本目は「とにかく動画ファイルが出力できた」が成功基準です。デザインが甘くても、ストーリーが薄くてもいい。最初の1本は出すこと自体が成果です。
テンプレ化を意識する 1本目から「2本目以降に流用できる構造」を意識します。テキスト・色・素材を後から差し替えやすい形にしておく。これだけで2本目の制作時間が半分以下になります。
配信まで通す 動画を作っただけで満足しない。実際に YouTube にアップロードする、Xに投稿する、Slackで共有する、までを1本目でやり切ります。配信パスがどこで詰まるか、最初に通しておくと2本目以降の運用が安定します。
まとめ
- 制作に入る前に「ターゲット・用途・フォーマット・尺・本数見込み」の5つを決める
- ブランドガイドライン(色・フォント・ロゴ・BGM・トーン)を1箇所に集約しておく
- 1本目は完璧を狙わず、配信まで通すのを最優先
「決める手間」と「1本目を作る楽さ」はトレードオフではなく、決めたほうが圧倒的に楽です。1本目で疲れたまま2本目に行くと、量産が止まる原因になります。
実装担当向けの補足: ディレクトリ・命名規則
ここからは Remotion で動画コードを実装する担当者向けの補足です。経営判断・マーケ判断としては前章までで十分なので、実装に入らない方は読み飛ばして問題ありません。
リポジトリの中での動画関連のディレクトリ構成は、最低限こんな配置がおすすめです。
video/
├── src/
│ ├── compositions/ # コンポーネント定義
│ ├── scenes/ # シーン単位のパーツ
│ ├── components/ # 共通UI(テキストカード・トランジション等)
│ ├── lib/ # ブランド定義・ユーティリティ
│ └── Root.tsx # composition の登録
├── public/ # 画像・音声・アイコン
├── out/ # レンダリング出力(.gitignore に入れる)
└── remotion.config.ts
ポイントは2つです。
out/は.gitignoreに入れる。レンダリング出力(mp4 / webm)は再生成可能なバイナリで、GitHub には上げない- 前章の「ブランド定義」は
src/lib/に置いて、全コンポーネントから参照する形にする。色を変えたいときの修正点が1箇所に集約される
命名規則も最初に決めておきます。コンポーネントは PascalCase、シーンファイルは kebab-case、画像は用途プレフィックス(bg-, icon-, logo-)など。AI 支援(Claude Code 等)で「あのシーン直して」と依頼するときに、ファイル名で意図が伝わる状態にしておくと会話がスムーズです。
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