動画コードを AI に書かせる、というやり方が現実的になりました。うちは Claude Code を Remotion と組み合わせて、自社プロダクトの動画制作を回しています。
このとき経営判断として知っておくべきは、「AIに任せる範囲」と「任せない範囲」の線引きです。AI を入れれば動画制作のすべてが自動化される、というのは誤解です。
この記事では、AI支援を動画制作に入れた場合の実用ラインを整理します。前半は経営・マーケ判断、末尾に実装補足を付けています。
AIに任せる範囲・任せない範囲
実運用で自然に役割分担が固まりました。
AIに任せる範囲
- 定型シーンの組み立て(テキストカード・トランジション・基本アニメーション)
- 既存テンプレへのテキスト・色・素材の差し替え
- 似たような動画を「○○な内容で1本作って」と指示して下書き出力
- 1本目で詰まった部分の代替案出し
AIに任せない範囲
- 動画全体のコンセプト・ストーリーライン
- ブランドガイドラインの判断(どの色・トーンが自社に合うか)
- ターゲット視聴者の理解(誰に向けて作るか)
- 配信の意思決定(いつ・どこに出すか)
- 「これでバズるか」の判断
線引きの感覚としては、「型ができたあとの量産作業はAI、型を決める判断は人」です。
制作時間の実感
具体的な数字は条件で変わりますが、うちの体感としてはこんな感じです。
| フェーズ | AI支援なし | AI支援あり |
|---|---|---|
| 1本目の構築(テンプレ含む) | 2〜3日 | 1〜2日 |
| 2本目以降(同じテンプレ) | 半日〜1日 | 1〜3時間 |
| 修正サイクル | 半日 | 30分 |
特に効くのは2本目以降の量産フェーズです。1本目はテンプレ設計に時間がかかるので効果は限定的ですが、固まったあとの新作は「あのテンプレでこういう動画」と指示するだけで下書きが出てきます。修正サイクルの速さも大きく、SNSのトレンドに合わせた動画も間に合います。
AIに頼れない3つのこと
AI支援を入れても自分でやる必要が残るものがあります。
バズるかどうかの判断
シリーズの導入記事 でも書きましたが、AIは動画制作の問題は解きますが、コンテンツがバズるかは解きません。何を撮るか・どう構成すれば刺さるかは、自社の試行錯誤と外部知見で決める必要があります。
ブランドの一貫性
AI に「いい感じに作って」と任せると毎回違う色・フォント・トーンが出てきます。ブランドの一貫性は、最初に ブランド定義を1箇所にまとめておく ことで人が制御します。
配信のタイミング・チャネル
「いつ・どこに出すか」はAIに判断させない領域です。SNSのトレンド、競合の動き、他チャネルとのバランスは人が見て決めるべき部分です。
運用のコツ
経営判断として、3つだけ覚えておくと迷いません。
1. 一度きりの「テンプレ設計」を人がやる 最初のテンプレをAIに丸投げするとブランドが定まりません。テンプレ設計は人がやり、AIは量産フェーズから入れる。
2. AIの出力をそのまま使わない前提で運用する AIの下書きを必ず人がレビューして調整します。「思った感じと違う」を伝え直して再生成、を3〜4回繰り返すのが現実的です。
3. AI支援のコストは既存サブスクで吸収する 動画のためだけにAI支援を契約するのは合理的ではありません(コスト分解の記事で詳しく書いています)。既存の開発業務でClaude Code等を使っているなら、動画分は按分実質0円で運用できます。
まとめ
- 動画制作にAI支援を入れると量産フェーズの効率が大きく上がる
- ただし「コンセプト・ブランド・配信判断」は人が決める部分として残る
- AIに任せるのは「型ができたあとの量産」、人が決めるのは「型」
- 制作時間は2本目以降で半日→1〜3時間まで圧縮できる体感
- バズらせる研究は別問題。AIは制作を速くするが刺さるかは保証しない
「AIを入れたら全部自動化される」という期待は半分しか当たりません。残りの半分は人がやることとして残る前提で投資判断してください。
実装担当向けの補足: プロンプトと運用パターン
ここからは Claude Code を Remotion に組み合わせて使う実装担当者向けの補足です。実装に入らない方は読み飛ばしてください。
よく使うプロンプトパターン
- 「
src/compositions/PromoVideo.tsxを読んで、同じ構造で〇〇向けのプロモ動画を1本作って」 - 「
scenes/warning/の警告フォーマットで『シフト管理でやりがちな失敗3つ』のリールを作って」 - 「いまのレンダリングが10秒で切れる。30秒に伸ばして、後半はテキストカードを2枚追加」
ポイントは参照すべき既存ファイルを明示することです。src/lib/brand.ts などのブランド定義ファイルをコンパクトに保ち、参照する形で会話を進めると、ブランドが揃った下書きが出てきます。
よくある失敗パターン
- ブランド定義を一元化せず色やフォントをハードコード → 「揃えて」と頼んでも揃わない
- 「いい感じに」と曖昧な指示 → 毎回違うトンマナの動画が出てくる
- AI出力を無修正で配信 → 違和感が積み上がりブランドが薄れる
リポジトリ構造のコツ
前回の準備編のディレクトリ構造に加えて、AI支援を入れるなら以下を意識します。
src/lib/brand.tsなどにブランド定義を集約し、コンポーネントから参照させる- フォーマットごとに1ファイル(
scenes/aruaru/,scenes/warning/など)に分割しておくと指示しやすい - README(または
AGENT.md)に「動画を作るときの約束事」を書いておくと会話の前提を共有できる
関連リンク
AI支援を動画制作に入れるべきか迷っている方は、自社の運用フェーズから一緒に整理することもできます。気軽にご相談ください。



