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この記事の対象: 仕込み量を感覚と先週の売上で決めているパン屋・ベーカリーの店主の方
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先にやるべきこと: POSの販売時刻と仕込み数から売り切れ時刻を自動で導き、その時刻までの売上から需要を推定して翌日の仕込み目安に使う
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見込める変化: 仕込み量の根拠が「売上」から「需要の推定と過去の判断」に変わり、廃棄と売り切れの両方が記録に残ります。店主が決めるのは仕込み数だけで、今も紙に書いている数です。決めた数はスタッフに自動で届きます。売り切れがほとんど出ない店では効果がありません
パン屋の現場からは「先週これだけ売れたから今週も同じだけ」と感覚で決めている、という店主の声が聞こえます。多くの店で、仕込み量の決め方はこれに近いのではないでしょうか。
問題は感覚で決めていることではなく、根拠の「先週の売上」が、売り切れた日ほど本当の需要より小さいことです。
「先週の売上」は、売り切れた日ほど需要より小さい
15時にクロワッサンが売り切れると、売上に残るのは15時までに売れた数だけです。廃棄したパンは翌朝目の前に残りますが、買えなかったお客様の分はどこにも残らず、翌週はその「売れた数」で同じ量を仕込みます。
- 売り切れが多い店ほど、売上が需要を下回り、少なめの仕込みが固定される
- 同じ平日でも午前中に売れる日と午後にぽつぽつ売れる日がある、という店主の声もあり、廃棄数だけでは、いつ売り切れたかが分からない
- 廃棄は数えても売り切れは数えていない店が多く、翌朝の判断材料が廃棄の側に偏る
業界メディアが報じている目安では、需要予測が難しい店ではロス率が10〜20%に達するケースも珍しくないとされています。
売り切れた日の売上は需要ではない。研究では予測が少なめに偏ると分かっている
この構造は、パン屋の外で数字で確かめられています。Wang らが2025年に公開した生鮮小売の大規模データセット研究 FreshRetailNet-50K です。arXiv のプレプリントで、査読誌に掲載されたものではありません。
対象は生鮮小売チェーンの実データで、18都市898店舗、生鮮863品目、50,000本の店舗×商品の時系列です。1時間単位で欠品(売り切れ)の状態が注釈されています。町のパン屋のデータではありません。
売上をそのまま需要として学習した予測は、欠品期間の需要を系統的に過小評価していました。欠品時間の注釈を使って潜在需要を復元してから予測すると、この過小評価は7.37%からほぼゼロになり、予測精度は2.73%改善しています。
売り切れで需要が見えなくなる問題は、1994年の Nahmias の研究など、1990年代から在庫理論の研究対象でした。新しいのは、時刻の記録があれば偏りが消えることを大規模な実データで確かめた点です。
この研究はパン屋の廃棄率や改善幅を示すものではありません。借りるのは「売り切れの記録がないと需要が過小評価される」という構造だけです。
Before / After
| Before | After | |
|---|---|---|
| 売り切れ時刻の記録 | 残らない(廃棄数だけ数える) | POSの販売時刻と仕込み数から自動で導かれる |
| 仕込み目安の根拠 | 先週の売上と感覚 | 推定した需要と過去の仕込み判断の蓄積 |
| 仕込み一覧の共有 | 口頭や紙でスタッフに伝える | 店主が仕込み数を決めると同時にLINE・メールで自動送信 |
品目ごとの販売時刻が販売明細に残るPOSなら、販売数の累計が仕込み数に達した時刻を売り切れ時刻として扱えます。明細を取り出せるかは店のPOS次第で、最初に確認する点です。
どうやって解決するか
Step 1: 先月、何日・何品目が売り切れたかを数える
直近1ヶ月で、品目ごとに何日売り切れたかを書き出します。売り切れの日数が多い品目ほど、売上を根拠にした仕込みが需要を下回っています。
Step 2: 打ち手を比較する
| 選択肢 | メリット | デメリット | 判定 |
|---|---|---|---|
| POSの売上を曜日別に見て仕込む | 追加の記録が要らない | 研究では欠品期間の需要が7.37%過小評価された。少なめの仕込みが固定される | — |
| 高度な需要予測ツールを入れる | 天気やイベントも織り込める | 入力が売上のままなら偏りも学習する。研究で精度が上がったのは需要を復元したあとの予測 | — |
| 棚が空いた時刻を手で記録する | 仕組みが要らない | 忙しい時間帯ほど記録を忘れて欠測が出る。材料集めを人に残している | — |
| POSの販売時刻と仕込み数から売り切れ時刻を自動で導き、需要と過去の判断から仕込み目安を提示する | 材料集めは機械に任せ、店主が決めるのは仕込み数だけ。判断を重ねるほど目安が自分の店に合っていく | 最初にPOSの売上明細を取り出す接続を作る | ✅ 採用 |
playparkにパン屋での導入実績はまだありません。判断の材料を機械で揃える構造は他業種で実装しています。広告業の勤怠集計の実例では、記録を一箇所に揃えて月次集計が数時間から数分になりました。工数データを手で転記していた工数集計の実例では、転記ミス・集計漏れが月2〜3件から0件になっています。材料集めを人から外す順番は同じです。
Step 3: 店主自身で試せる範囲から始める
POSの売上CSVと仕込み数のメモがあれば、自分で試せます。AIコーディングツールに両方を渡し、「品目ごとに、販売数の累計が仕込み数に達した時刻を出す」と頼めば、売り切れ時刻の表ができます。次に「売り切れた日は、その時刻までの売上から一日の需要を推定する」と頼めば、需要推定の表まで進めます。
ここまでは自分で試した表だけで進められます。1ヶ月動かせば、品目ごとの売り切れ日数と、売上と推定した需要の差が数字で見えます。差の大きい品目から、仕込み目安を変える判断に使えます。
天気の自動取得、過去の判断の蓄積、決めた数のスタッフへの自動送信まで広げたくなったら、AI実装支援のような外部の手もあります。仕込み数を決める役はそのまま店主に残ります。
まとめ
| 指標 | 変化 |
|---|---|
| 売り切れ時刻の記録 | 残らない → POSの販売時刻と仕込み数から自動で導かれる |
| 仕込み目安の根拠 | 先週の売上と感覚 → 推定した需要と過去の判断の蓄積 |
| 店主が決めること | 感覚で仕込み数を決め、口頭でスタッフに伝える → 目安を見て仕込み数を決める。伝達は自動送信 |
仕込みを絞って廃棄を減らすと、売り切れの日が多くなり、需要はさらに見えなくなります。この悪循環を止めるのは予測の高度化ではなく、記録の取り方です。まずできるのは、売上CSVと仕込み数のメモを並べて、売り切れ時刻を導いてみることです。
自分で試す、相談する、どちらでも
試した表を持ち込んでいただければ、そこから先の設計を一緒に整理します。最初から相談したい方も、お問い合わせからどうぞ。



