「午前は市内、午後は隣の市」。訪問見積もりの予定をそう組んだ時点で、その担当者の一日はほぼ埋まります。移動と滞在を足せば、その日の半分は戻ってきません(渋滞が読めない日は、それ以上に)。
しかも、その半分が売上になるとは限りません。引越しの依頼者はたいてい数社に声をかけていて、選ばれなければ半日はまるごと消えます。この記事で扱うのは、訪問を増やす方法でも断る方法でもありません。限られた訪問枠を、どの依頼に配るかを先に決める考え方です。
訪問1件の原価は「半日」ではなく「1枠」で数える
引越しの見積もりは、荷物を見ないと確定しません。訪問そのものは削れない工程です。問題は、その原価を移動時間と人件費だけで数えていることにあります。
実際に減っているのは時間ではなく、枠です。一日に組める訪問には上限があり、一件受けた瞬間に残りが減ります。断った側の依頼のほうが高単価だったかどうかは、後から分かりません。機会損失は請求書に出てきません。
参考までに試算します。1日3枠、成約率4割なら、訪問6件のうち4件ぶんの半日は売上になりません(つまり、動いた時間がまるごと消える日が出てきます)。これは実測ではなく仮定を置いた数字ですが、枠で数え直すと、最初の意思決定が「どこへ行くか」だと見えてきます。
依頼が届いた時点で、実はかなり分かっている
訪問前に材料がないわけではありません。依頼を受けた時点のやり取りには、成約可能性と単価を左右する情報が並んでいます。
- 荷物量の目安 — 間取りと世帯人数
- 移動距離と、搬出入の階数・エレベーターの有無
- 希望日が3〜4月の繁忙期に重なるか
- 条件の書きぶりが、どれだけ具体的か
最後の一つがよく効きます。エレベーターの有無まで自分から書いてくる依頼は、たいてい本気度が高い(そこまで書く人は、もう部屋を決めています)。
この判断を、ベテランの担当者は無意識にやっています。依頼を見た瞬間に「これは行く」「これは概算で足りる」を当てている。属人的なだけで、基準そのものはすでに社内にあるわけです。であれば、その頭の中の基準を、他の担当者も使える形に書き出せないでしょうか。
全部行く/全部断る、ではなく閾値で振り分ける
オンライン完結の概算に全面移行できれば話は早いのですが、単身以外では精度が落ちます。かといって全件訪問では枠が足りません。現実的なのは、届いた依頼を3つのレーンに振り分けることです。
| 依頼の傾向 | 振り分け | 最初の返し方 |
|---|---|---|
| 荷物量が多く、希望日と条件が具体的 | 即訪問 | その日のうちに訪問枠を押さえる |
| 単身・近距離で条件が定型的 | オンライン概算 | 概算を先に返し、合意できたら訪問 |
| 情報が薄い、希望日が未確定 | 条件付き | 不足分だけ聞き、返信の中身で再判定 |
変わるのは訪問の中身ではなく、訪問しない側への初動の速さです。概算が当日中に返れば、他社より先に候補として残れます。
そして、この振り分けの基準を決めるのは3〜4月ではありません(枠がいちばん足りない時期は、いちばん考える時間がない時期でもあります)。閑散期のうちに過去の依頼と成約を突き合わせ、どんな条件の依頼が成約したのかを言葉と数値にしておきます。
他業種では、この「先に絞る」がどう効いたか
playpark に引越し業界での導入実績はまだありません。ただし「高い工程に入る前に、手元の情報で絞る」という形は他業種で実装しています。以下は他業種で実測した数字です。
構造がいちばん近いのは、採用の書類選考です。人が1通ずつ読んで判断していた工程をAIの下読みに置き換えた採用支援の実案件では、1人あたり15〜20分かかっていた選考が約2分になりました。面接という高い枠を誰に使うか、書類の段階で決める仕組みです。
振り分けた後を追える形にした例もあります。多段階の手続きを一覧化した入社対応の実例では、対応工数が80%削減されました。
現場が使わない仕組みは動きません。手元の端末から希望を出せる形に作り直したシフト管理の実例では、スタッフ利用率が約30%から85%以上になりました。
どれも引越しの話ではありません。共通しているのは、費用の高い工程に入る前に、すでに手元にある情報だけで順番をつけた点です。訪問見積もりは、その「高い工程」がとりわけ高い仕事です。
技術者向け: 振り分けを仕組みにするときの設計
受付時の入力項目を、間取り・距離・階数・希望日といった判定に使う軸へ寄せておきます。スコアは複雑な学習モデルにせず、条件と重みの表から始めるほうが運用に乗ります。閾値は設定値として外に出し、繁忙期と閑散期で切り替えられるようにします。判定結果は必ず担当者が上書きでき、上書きの記録を次の重み見直しに使います。
訪問枠の配り方から、一緒に設計しませんか
最初の一歩はシステムではありません。直近1年ぶんの依頼と成約を並べ、成約した依頼に共通する条件を3つ書き出すところからです。条件が言葉になれば、振り分けは仕組みにできます。
playpark の業務効率化サービス「SHITATEYA」では、いまの受付方法を変えずに依頼の振り分けから設計できます。業種を問わない進め方は業務自動化ソリューションで紹介しています。訪問枠の配り方に迷いがあるなら、お問い合わせからご相談ください。



