「履歴書と職務経歴書が20通。全部読んで、スコアつけて、エージェントに返信して...」
採用担当なら一度は経験する、あの果てしない書類の山。しかも「この人、リーダー経験あるっけ?」と3回目に同じ書類を読み返す瞬間、ふと思うんです。「これ、人間がやる仕事なのか...?」 と。
今回は、Cistree社の採用業務をAIで変えた受託開発プロジェクトの開発ストーリーをお届けします。Gemini API × Next.js で書類選考の自動化に挑んだ、リアルな現場の話です。
プロジェクト概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| クライアント | Cistree社(IT企業・人材採用強化中) |
| 開発形態 | playpark LLC による受託開発 |
| 開発期間 | 約1週間(2026年3月末〜4月初旬) |
| 技術スタック | Next.js 16 / Gemini API / Neon PostgreSQL / Vercel |
課題:採用業務の「見えないコスト」
Cistree社は成長フェーズにあり、積極的に人材採用を進めていました。ただ、採用プロセスには人の手に頼り切った部分が多く残っていました。
1. 書類選考に時間がかかりすぎる
履歴書と職務経歴書を1通ずつ開いて、経験年数を数えて、リーダー経験があるか確認して、PMO歴を探して...。1人あたり15〜20分(集中力が切れると30分コース)。候補者が増えるほど、採用担当の退勤時間が後ろにずれていきます。
2. 評価基準が属人的
「この人いいと思う」の「いい」が、担当者によって微妙に違う。上流工程の経験を重視する人もいれば、リーダー経験を優先する人もいる。一貫した基準で比較できないのは、採用の質に直結する問題でした。
3. 候補者情報が散らばっている
Excelの管理表、メールの添付ファイル、Google Driveのフォルダ、エージェントからの連絡...。「あの候補者の書類どこだっけ?」が日常的に発生。面接前に慌てて情報をかき集める光景、心当たりありませんか?
解決策:AI採用管理ダッシュボード
「書類選考のAI自動化」と「採用プロセスの一元管理」を両立する、Cistree社専用の採用管理ダッシュボードを受託開発しました。
主要機能
| 機能 | 効果 |
|---|---|
| AI書類選考 | 履歴書・職経をGeminiが読み取り、経験年数を定量スコア化 |
| 候補者一元管理 | 全候補者の情報・ステータスをダッシュボードで把握 |
| 多段階面接記録 | 相互理解→1次→2次→お茶会まで、評価を一気通貫で管理 |
| AI面接支援 | 合否判定レコメンドと連絡文案の自動生成 |
| タレントプール | 不採用候補者もカテゴリ別に管理、将来の採用に活用 |
技術的なこだわり:Gemini APIで「読んで・評価して・まとめる」
このプロジェクトの核心は、AI書類選考の設計です。ただPDFをOCRするだけじゃない。「採用担当者の目」をAIに移植するというチャレンジでした。
書類選考の自動化フロー
Gemini 2.5 Flash を選んだ理由
AI書類選考では Gemini 2.5 Flash を採用しました。選定のポイントは3つ。
- マルチモーダル対応: PDFや画像をそのまま投げてテキスト抽出できる。OCRライブラリと前処理パイプラインが不要になった
- 構造化出力: 「リーダー経験年数」「上流工程年数」「PMO歴」を数値データとして返してくれる。ふわっとした文章ではなく、比較可能な数字で出てくるのがポイント
- コスト: Flash モデルなので1件あたりの処理コストが安い。書類選考は数をこなすので、ここをケチれるかどうかで月額が全然違ってくる
評価の4軸スコアリング
AIが書類から抽出するのは、Cistree社の選考基準に合わせた4つの定量スコアです。
| 評価軸 | 内容 |
|---|---|
| リーダー経験 | チームリーダー・マネジメント経験の年数 |
| 下流工程 | 実装・テスト等の実務経験年数 |
| 上流工程 | 要件定義・設計等の上流経験年数 |
| PMO経験 | プロジェクトマネジメントオフィス経験年数 |
これに加えて、AIが3〜5文の経歴サマリと詳細評価を自然言語で生成します。数字だけじゃなく「この候補者のどこが良くて、どこに懸念があるか」まで言語化してくれる。採用担当者は、AIのサマリを読んでから原本を確認するだけ。判断の起点が「ゼロから読む」から「AIの要約をレビューする」に変わったわけです。
人間がAIを上書きできる設計
ここで大事なのは、AIの判定は「推奨」であって「決定」ではないということ。
AIが「通過推奨」「見送り推奨」「要検討」の3段階で提案した後、採用担当者が「通過」「保留」「不採用」「辞退」を人間の判断として記録します。AIの推奨を覆すのは全然あり。むしろ、AIが見落とすニュアンスを人間が拾うのが、この仕組みの本質です。
技術構成
| 項目 | 採用技術 |
|---|---|
| フレームワーク | Next.js 16 / React 19(Webアプリ構築フレームワーク) |
| データベース | PostgreSQL(Neon Serverless) |
| DB操作ツール | Prisma 7(データベースを安全に扱うためのツール) |
| AI | Google Gemini API(gemini-2.5-flash) |
| ファイルストレージ | Google Drive API |
| 認証 | Neon Auth(OAuth)+ 招待制アカウント管理 |
| UI | shadcn/ui / Tailwind CSS 4 |
| デプロイ | Vercel |
なぜこの構成なのか
Neon Serverless PostgreSQL + Vercel の組み合わせは、サーバーレスでスケールしつつコストを抑えられる。採用管理システムは常時高トラフィックではないので、使った分だけ課金のサーバーレスが合理的です。
Prisma 7(データベース操作ツール)は、「こういうデータ構造にしたい」と定義すれば、あとはツールが安全に面倒を見てくれる。候補者・面接・選考結果のデータ関係が複雑なので、手書きSQL地獄にならないのは精神衛生上とても大事です。
招待制アカウント管理は、候補者の個人情報を扱うシステムとして必須でした。管理者がメールで招待リンクを送り、そのリンク経由でのみアカウント登録できる仕組みです。「誰でもサインアップできます」は、このシステムではNG(当然ですよね)。
開発プロセスのリアル
約1週間で本番デプロイまで
このプロジェクト、初回コミットから本番稼働まで約1週間です。「えっ、1週間?」と思いますよね。私たちも思いました。でも裏側では結構なことをやっています。
| フェーズ | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 仕様策定 | 画面設計・DB設計・認証フロー設計 | 2日 |
| MVP開発 | 候補者CRUD・AI選考・面接記録 | 2日 |
| 改善サイクル | パフォーマンス最適化・UX改善・バグ修正 | 3日 |
パフォーマンス最適化の泥臭い話
MVP完成後、クライアントから「動きがもっさりする」というフィードバック。Vercel環境でプロファイリングしたところ、ボトルネックが4つ見つかりました。
- 認証セッション:
get-sessionの応答に383ms。キャッシュTTLの明示化で100ms以下に - バンドルサイズ: Google連携ライブラリが190MB(重すぎでしょ...)。必要な部分だけに置き換えて劇的に削減
- データ取得の非効率: 候補者一覧で関連データを1件ずつ取得していた。まとめて並列取得するように改修
- 全件取得: 評価・タレントプールページが全データ一括読み込み。ページ分割と先読み表示を導入
「動きがもっさり」の一言から、4つのボトルネックを特定して全部潰す。 受託開発のリアルって、こういう地味な改善の積み重ねだったりします。
導入効果
定量的な成果
| 指標 | Before | After | 改善 |
|---|---|---|---|
| 書類選考(1名あたり) | 15〜20分 | 約2分(AIスコア確認 + 最終判断) | 約90%削減 |
| 評価基準の一貫性 | 担当者依存 | 4軸定量スコア | 標準化達成 |
| 候補者情報の検索 | Excel・メール・Driveを横断 | ダッシュボード一画面 | 即時アクセス |
定性的な成果
- 採用担当者の負荷軽減: 書類を「読む」作業から「レビューする」作業に変わり、判断に集中できるようになった
- 選考スピードの向上: AIが即座にスコアリングするので、候補者への返答が早くなった(候補者体験の向上にもつながる)
- ナレッジの蓄積: 全候補者の評価データが構造化されて残るので、採用基準の振り返りや改善に使える
まとめ
「採用書類、全部読まなきゃ」のプレッシャーから解放される。それだけで、採用担当の毎日はかなり変わります。
今回のシステムは、Gemini APIの書類読み取り能力と、Next.js 16のモダンなWeb開発スタックを組み合わせた、中小企業向けの採用管理システムです。playparkが受託開発として技術支援し、約1週間という短期間でMVPから本番運用まで立ち上げました。
AIは「人間の判断を代替する」のではなく、「人間が判断に集中できる環境を作る」 ためにある。その思想を、コードのすみずみまで反映したプロジェクトでした。
「うちの採用業務も、もう少し楽にならないかな」と感じている方。まずは今の業務フローの棚卸しから、一緒に整理してみませんか?



