「利用者ごとの体温と食事量は紙の記録から、服薬状況は介護記録ソフトから、請求に回すデータはExcelから拾う」
介護施設で記録管理を担当している方なら、1日分の記録を3か所から拾い集めて突き合わせる作業に、覚えがあるのではないでしょうか。現場で書いた紙の記録を、あとでシステムに入力し直す。入力し終えたら、今度は請求用のExcelに転記し直す。同じ数字を、形を変えて何度も書き写している。
この記事では、紙・介護記録ソフト・請求ソフト・Excelという複数の記録先をまたぐ「転記」の負担を減らす自動化の考え方を、他業種での実践知見をもとに紹介します。
こんなお悩みありませんか?
- 紙の記録・Excel・複数システムの間を、毎日1〜2時間程度(他業種の集計作業を参考にした目安)かけて手作業で転記している
- 転記中の数字の書き間違いに、あとで気づいて焦ることがある(記録ミスは、正直、笑って済ませられない)
- 転記のやり方を把握しているのが特定の職員だけで、その人が休むと誰も代わりに回せない(属人化のツケは、たいてい一番忙しい日に回ってくる)
もし一つでも当てはまるなら、この記事がお役に立てるかもしれません。
記録がバラバラな場所に増えていく理由
訪問介護・デイサービス・グループホームなど施設形態によって使うツールは違いますが、共通しているのは「記録の発生元がそもそも複数ある」という構造です。
- 紙の記録: バイタル、食事量、排泄、特記事項など、現場でその場に書き留めるしかないもの
- 介護記録ソフト: 日々のケア記録・服薬記録など、状態管理を目的にしたシステム
- 請求ソフト: 介護報酬の請求(レセプト)に使う専用データ
- Excel: シフト表や加算算定の集計など、既存システムに乗り切らない周辺業務
現場での即応性を優先すると紙は残らざるを得ず、記録ソフトと請求ソフトは別ベンダーであることが多い(同じ利用者の名前を、システムごとに毎回入力し直す人生)。結果として、システムそのものではなく、システムとシステムの「間」だけがいつも手作業になっているのが実情に近いのではないでしょうか。
自動化した場合の目安
playpark が他業種の記録・データ連携の自動化で積み上げてきた実績を踏まえて、介護施設の記録転記に当てはめた場合の目安をまとめると、次のようになります。
| Before(手作業) | After(自動化後の目安) | |
|---|---|---|
| 記録の転記時間/日 | 1〜2時間 | 10〜15分程度(約85%削減・参考値) |
| 転記ミスの発生 | 月に数件 | 自動チェックによりほぼゼロに |
| 記録の所在把握 | 数日かかることも | その場で確認可能 |
1〜2時間が10〜15分程度(あくまで参考値ですが)になるということは、残業を1本減らせるか、その時間を利用者と向き合う時間に回せるということです(記録のための記録に、日々の時間を溶かしている場合ではありません)。
実際に計測した実績として、入退室ログと人事システム(カオナビ)の連携では、日次集計の作業時間を2時間から5分に、転記ミスを月3件から0件に減らした例があります(対象は一般企業の勤怠管理、入退室ログ×カオナビ連携の事例はこちら)。紙やログを起点に「システムA → システムB」と多段で転記していく構造は、業種が変わっても同じパターンで自動化できます。
どうやって解決したか
Step 1: 課題の整理
紙をいきなりゼロにするのは現実的ではありません。バイタルや特記事項をその場でスマホやタブレットに正確に入力するには時間がかかり、緊急時の申し送りは紙や口頭のほうが早いという事情もあります(「まずはペーパーレス化から」と号令をかけて現場の反発でさようならになった、という話もよく聞きます)。だからこそ、変えるべきは「記録の取り方」ではなく、「記録した後の転記」だと切り分けて考えることが出発点になります。
Step 2: アプローチの選定
| 選択肢 | メリット | デメリット | 判定 |
|---|---|---|---|
| 紙をやめて全部システム化 | 記録が一元化される | 現場のオペレーション変更コストが大きい | — |
| 介護記録ソフトを乗り換える | 最新機能が使える | 移行作業と職員の再教育負担が重い | — |
| 紙・既存システムを残したまま転記だけ自動化 | 現場の運用を変えずに済む | 連携部分の設計・構築が必要 | ✅ 採用 |
現場の記録方法は介護の質と安全に直結するため、いきなり変えるのはリスクが大きい判断です。まずは「転記」という間の作業だけを自動化するほうが、現実的で始めやすいアプローチになります(現場のオペレーションを変えずに済む、というのは地味に効きます)。
Step 3: 実装と検証
導入は約4〜6週間が目安です(他業種の導入実績を参考にした期間です)。
- ヒアリング・記録フローの整理(1週間程度、参考目安) — 紙のどの項目が、どのシステムのどの画面に転記されているかを洗い出す
- 転記ルールの設計(1〜2週間) — 紙のデータ化方法や、システム間の連携可否を精査する
- テスト運用(2週間程度) — 実データで転記精度とエラー検知を確認する
- 本番運用 — 現場の負担を見ながら、対象記録を段階的に拡大していく
駆け足で全部を一気に自動化しようとしないのがコツです(現場が疲弊しては、何のための自動化かわからなくなるので)。
技術者向け: 連携の設計で見るポイント
紙の記録をデータ化する場合、手書き文字の認識精度は医療・介護記録に求められる正確性を単体で満たしにくいため、自動読み取りと職員によるダブルチェックを組み合わせる設計が現実的です。システム間の連携は、各ベンダーが外部連携用の窓口を公開していないケースも多く、その場合はCSVエクスポート・インポートを定期的な自動処理(バッチ処理)で代替する構成になることがよくあります。
あなたの施設でも始められます
紙とExcelと複数システムをまたぐ記録の転記は、介護の現場だけの悩みではありません。ただ、記録の取り方そのものを変えられないという制約があるからこそ、「転記だけを自動化する」というアプローチが介護施設と相性がいいと言えます。
「うちは規模が小さいから」「システムが古いから」とためらう必要はありません(その言い訳、他業種の担当者からもよく聞きます)。既存の記録方法を活かしたまま、転記の部分だけを自動化するなら、大きなリスクなく始められます。
playpark の業務効率化サービス「SHITATEYA」では、既存の記録方法を変えずにシステム間のデータ連携を設計するところから相談できます。介護施設に限らない業務自動化の取り組みは業務自動化ソリューションのページでも紹介しています。まずは今の記録の流れがどこで滞っているか、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
関連記事
- Excel手作業を自動化した3つの実例と進め方 — 業種を問わない転記自動化の進め方をまとめた記事



