「あの人が、明日突然来なくなったらどうなるんだろう」。予約調整は店長しかできない、経理は社長の配偶者が全部やっている——回ってるからこそ後回しになりますが、その人が病気になった瞬間に止まるという構造は変わりません。この記事はその不安を業務ごとの点数に変える方法を整理します。点数にすれば優先順位がつき、来週から動けます。
「あの人が抜けたら止まる業務」を点数で並べる発想
業務ごとに「独力で最後まで完遂できる人が何人いるか」を数えて、属人化の度合いを3段階で分類します。
- 1人しかできない → 🔴 1人依存(最悪。抜けた瞬間に止まる)
- 2人できる → 🟡 2人OK
- 3人以上できる → 🟢 3人以上(リスクは低い)
これを業務にかかる月間時間と掛け合わせて優先度スコアを出します。月1時間の属人化業務は脅威が小さく、全員できる業務でも月60時間かかるなら経営インパクトは大きい。この依存度の逆数の考え方は1994年発祥の bus factor に近いです。属人化リスクが経営に効く理由は「あの人しか分からない」をなくす記事で書きました。
数値化の3ステップ
- 業務を棚卸し(手順)
- 各業務の「独力でこなせる人数」を埋める(◎主担当/○自力/△サポート/空欄、◎と○の合計)
- 月間時間 × 依存度ウェイトでスコアを出す
| 独力でできる人 | 依存度 | ウェイト |
|---|---|---|
| 1人 | 🔴 1人依存 | × 2.0 |
| 2人 | 🟡 2人OK | × 1.5 |
| 3人以上 | 🟢 3人以上 | × 1.0 |
優先度スコア = 月間時間(h/月) × 依存度ウェイト。並べると上位3〜5件が「来月から手を付けるべき業務」として浮かびます。
2業種でサンプル計算してみる
以下は業界構造を典型化した架空の構成例です。「数値化したらこう見える」という計算プロセスを示すための例として読んでください。
ケース1: 不動産仲介6名(代表1・営業3・事務2)
| 業務 | 月間h | 独力でできる人 | 依存度 | スコア |
|---|---|---|---|---|
| 賃貸借契約書 | 25 | 代表のみ | 🔴 2.0 | 50 |
| ポータル物件登録 | 30 | 代表+営業A | 🟡 1.5 | 45 |
| 内見同行 | 40 | 営業4名 | 🟢 1.0 | 40 |
| 写真から設備判別 | 20 | 代表のみ | 🔴 2.0 | 40 |
| オーナー対応 | 15 | 代表+営業A | 🟡 1.5 | 22.5 |
| SaaS二重入力 | 10 | 営業A | 🔴 2.0 | 20 |
| 経費精算 | 12 | 事務2名 | 🟡 1.5 | 18 |
- 賃貸借契約書(50, 🔴) — 代表のみが書ける。「手続きが特定の人にしか分からない」の正体
- ポータル物件登録(45, 🟡) — 複数サイトへの転記量が大きい
- 内見同行・写真判別(同点 40) — 性質が違う。内見は時間勝負、写真判別は代表の経験知
ケース2: 美容室6名(店長1・副店長1・スタイリスト2・アシスタント1・新人1)
| 業務 | 月間h | 独力でできる人 | 依存度 | スコア |
|---|---|---|---|---|
| 予約電話の応対 | 60 | 全員 | 🟢 1.0 | 60 |
| 新規客カウンセリング | 40 | 新人以外5名 | 🟢 1.0 | 40 |
| 仕上げチェック | 30 | ベテラン4名 | 🟢 1.0 | 30 |
| 給与計算・売上集計 | 12 | 店長のみ | 🔴 2.0 | 24 |
| 新人カット指導 | 20 | 店長+ベテラン2名 | 🟢 1.0 | 20 |
| クレーム対応 | 8 | 店長+副店長 | 🟡 1.5 | 12 |
| Instagram投稿 | 6 | スタイリストA+B | 🟡 1.5 | 9 |
- 予約電話(60, 🟢) — 全員できるが業務量が大きい。属人化でなく「時間量」の問題
- カウンセリング(40, 🟢) — 新人を除けば全員できるが時間がかかる
- 給与計算(24, 🔴) — 唯一の典型的な属人化。時間は短いが店長が抜けたら止まる
| 業種 | 上位スコアの正体 |
|---|---|
| 不動産6名 | 代表しかできない手続き+営業の作業集中(属人化主導) |
| 美容室6名 | 予約・カウンセリング・仕上げの時間量(業務量主導) |
数値化しないと自社がどちらに偏っているか分からないのが計算の最大の価値です。
数値化したあとに選ぶ打ち手
スコア上位3つに絞り、全部やろうとしないのが鉄則です。
- マニュアル化(🔴×中時間):AIに質問形式でヒアリングさせ整形する方法が現実的(実装手順)
- 既存資料のAI検索化(🔴×検索時間):月1万円以下で導入し検索時間を90%削減した例(RAG導入事例)
- ツール・道具の置換(🟡×大時間):複数サイト転記はSaaS自動連携で削減(ツール選定の考え方)
- 採用・分業/引き継ぎ仕組み化(🔴×大時間):教える時間が取れない状況を避ける(引き継ぎの記事)
実行段階ではn8n・Zapier・Make比較も参考になります。
| スコアの構成 | 主な打ち手 |
|---|---|
| 🔴×中〜大時間 | マニュアル化、AI検索、採用・分業 |
| 🟡×大時間 | ツール置換、自動化 |
| 🟢×大時間 | 業務設計の見直し、外注、または受け入れる |
| 🔴×小時間 | 様子見、または引き継ぎ仕組み化 |
配布スプシと、社員全員での実施について
不動産業向け・美容室向けの2シート構成で、優先度スコアは自動計算されます。ただし経営者ひとりで埋めると主観バイアスが入ります。「この業務は10時間くらい」と思っていても計測したら30時間だった、内見同行が実は月40時間だった、というケースはよくあります。社員全員で1枚のシートを埋める時間を作るのが一番確実です。
playparkでは社員全員でこのシートを埋める出張型ワークショップを提供しています。ご興味あればお問い合わせからご連絡ください(相談カテゴリは「DX推進」または「業務自動化」)。
まとめ
属人化リスクを業務 × 人 × 時間の3軸で点数化すると、漠然とした不安が優先順位に変わります。棚卸し・人の把握・打ち手選びで「来週から動ける状態」になります。



