「自動化したほうがいいのはわかってる。けど、何を自動化すればいいのかが、まずわからない」
DXとか業務効率化という言葉は何度も聞くし、ツールの広告も流れてくる。でも自分の会社に当てはめようとすると、最初の一歩で手が止まる。
これは判断力の問題ではなく、可視化されていないものは比較できないというだけの話です。今やっている作業は「当たり前」なので、並べないと軽重が見えません。
この記事は、1〜5名規模の会社やお店で「どこから手をつけるか」で止まっている方向けです(大企業向けのDX論とは前提が違います)。自動化を検討する手前の「業務の棚卸しと可視化」を自分の手で進める手順を整理しました。専門知識は不要です。
自動化を考える前に詰まる3つの原因
棚卸しをせずにいきなり「何を自動化しよう」と考えると、だいたい次のどれかで止まります。
- 全部が大事に見えて、優先順位がつかない — 並べないと軽重の差が見えない
- 時間の感覚が「体感」のまま — 実際の数字がないので投資判断にならない
- 頭の中だけで完結していて、人に渡せない — 外注もスタッフに任せるのも説明から詰まる
業務を一度すべて書き出して、頻度と時間の数字を付けるだけで、この3つはほぼ解消します。
棚卸しの全体像
やることは大きく3ステップ。紙とペン、あるいは表計算ソフトが1つあれば足ります。
| ステップ | やること | 時間目安 |
|---|---|---|
| Step 1 | 手作業・紙の業務を一覧に書き出す | 30分〜1時間 |
| Step 2 | 頻度と1回あたりの時間を記入 | 30分 |
| Step 3 | 「月の合計時間」で並べ替え候補を絞る | 15分 |
合計2時間あれば最初の一周は終わります。完璧を目指さず、まず一周することが大事です。
棚卸しの3ステップ
Step 1: 手作業の業務を全部書き出す
今やっている作業を思いつく限り書き出すことです。分類は不要。頭に浮かんだ順に箇条書きで出します。
「いつやるか」を思い出しながら洗い出すのがコツです。1日、1週間、月末月初と時間軸でたどると、埋もれている作業が出てきます。
- 毎日: レジ締め、売上の記録、予約や問い合わせの確認
- 毎週: シフトの作成、発注、SNSの更新
- 毎月: 請求書の作成・送付、給与計算、勤怠の集計
- 不定期: スタッフ登録、棚卸し、役所・取引先への提出書類
拾いたいのは特に 「手で入力している」「紙に書いている」「同じ数字を2回以上転記している」 作業です(自動化の候補になりやすいからです)。毎日なら月20回、1回5分でも月100分。すんなり10個で終わったら少し疑ってください。現実はその倍埋もれているものです。
Step 2: 頻度と時間で重みづけする
書き出した各業務に 「頻度」と「1回あたりの時間」 を記入します。業務が「体感」から「数字」に変わります。
| 業務 | 頻度(月の回数) | 1回の時間 | 月の合計時間 | 手入力・転記がある? |
|---|---|---|---|---|
| 売上の記録 | 26回 | 10分 | 約4.3時間 | あり |
| シフト作成 | 4回 | 90分 | 6時間 | あり |
| 請求書の作成 | 1回 | 180分 | 3時間 | あり |
| 予約・問い合わせ確認 | 26回 | 15分 | 約6.5時間 | 一部 |
| SNS更新 | 8回 | 20分 | 約2.7時間 | なし |
ポイントは2つ。「月の合計時間」を必ず出すこと(1回90分でも月1回なら影響は限定的です)。もう一つは時間は厳密でなくていいこと。「だいたい10分」で十分です。
数字が入ると「予約確認に月6.5時間」のように、見過ごしたコストが立ち上がります。この「感覚と数字のズレ」こそ一番見つけたいものです。
Step 3: 自動化候補に優先順位を付ける
数字がそろったら最後は優先順位です。「合計時間が長い順」だけで決めず、2つの軸で見ると判断がぶれません。
- インパクト: 月の合計時間。長いほど効果が大きい
- 置き換えやすさ: 手順が決まっていて毎回同じやり方の業務ほど向く
各業務を4つのゾーンに振り分けます。
| 置き換えやすい | 置き換えにくい | |
|---|---|---|
| 時間が長い | 最優先 | 要検討(分解する) |
| 時間が短い | ついでに対応 | 後回し |
おすすめは左上の 「時間が長くて、置き換えやすい」業務から手をつけることです。効果が大きく成功体験を作りやすいです。右上の「置き換えにくい」業務は、作業を分解して繰り返し部分だけを切り出すと道が見えます。
候補の目安: 転記がある/毎回ほぼ同じ手順/担当者が偏っている/ミスの影響が大きい。毎回判断が必要な業務は人が担うほうが価値が出ます。
棚卸しが終わったら何が変わるか
ここまでの3ステップを終えると、手元には次のものが残ります。
- 自社の業務が一覧になった表
- それぞれにかかっている月の合計時間という「数字」
- 「まずここから手をつける」という優先順位
この3つがあるだけで選択肢が現実的になります。「これだけかかっていて楽にしたい」と数字で説明でき、投資判断の土台になります。
次の段階では、この棚卸し表がそのまま材料になります。業務効率化3ステップの記事や、外注か内製かの判断軸の記事へ。
業務側が終わったら、次は 人側の棚卸し です。「独力で完遂できる人が何人いるか」を埋めると属人化リスクが点数で見えます。手順は属人化リスク診断へ。
まとめ
| 状況 | 次の一手 | かかる手間 |
|---|---|---|
| 何が時間を食っているか曖昧 | Step 1〜2で書き出して数字を付ける | 約1.5時間 |
| 候補は見えたが優先順位に迷う | Step 3の2軸で振り分ける | 15分 |
| 優先順位は出たが進め方が不安 | 数字を持って相談相手に話す | — |
「何を自動化すべきかわからない」の正体は「まだ全部を並べて見ていない」だけです。紙とペンで2時間あれば一周でき、ぼんやりしていた課題が具体的な一歩に変わります。
playparkは2人の小さな会社で、サイト制作からバックオフィスの業務改善まで対応しています。「棚卸ししたけど、ここから先が不安」という段階でしたら、一緒に整理しませんか。



