「うちもそろそろ営業管理を始めたほうがいいんだろうな」
そう思いながら数ヶ月が過ぎている、というお気持ち、ありませんか?検索するとSFA・CRMといった横文字が一気に並ぶのですが、営業1〜5名の会社にとっては、どれも機能過多に見える——というのが正直なところだと思います(実際は、必要なのは1枚のシートだけで足りる場面がほとんどです)。
商談メモは紙の手帳とチャットとメールに散らばっていて、お礼メールを送ったかどうかもうろ覚え。これは決してだらしないわけではなく、「管理する仕組みを作る時間」より「目の前の商談」の優先度が高かっただけです。
この記事は、従業員1〜5名の会社が、今あるツールだけで営業管理を立ち上げる順番を、3ステップにまとめたものです。スプレッドシート1枚から始めて、無理なく続けるところまで。playparkも2人で営業をしていて、この順番でゼロから組み立てた経験をもとにしています(最初から完成形を目指さず、続けやすい最小単位から書いていきます)。
まず確認したいこと:営業管理を始める前のチェック
3ステップの前に、ひとつだけ確認させてください。
| あなたの状況 | この記事の役立ち方 |
|---|---|
| 商談メモが手帳・メール・記憶に分散している | Step 1から順に読む |
| シートはあるが見直しが続かない | Step 2 / Step 3だけでOK |
| すでにCRMを使い込んでいて運用設計を見直したい | 2人チームの営業運用の作り方のほうが合います |
すでに何らかのツールを使い込んでいて運用設計の話を求めている方には、本記事は少し物足りないかもしれません。一方で、「これから始める」「過去に挫折した」「Excelすら開いていない」という方には、ここから順番に進めると無理なく動き出せます。
なぜ3ステップに絞るのか
営業管理が続かない理由は、たいてい仕組みが最初から大きすぎることです。
- 項目を20個並べたシートを作って、3週目には埋まらなくなる
- 高機能ツールを契約して、初期設定のまま3ヶ月放置
- 「ちゃんとやらなきゃ」というプレッシャーで開く気が失せる
1〜5名の会社に必要なのは、機能の網羅ではなく続けられる粒度です。だから今日紹介するのは、極端なくらい簡素な3つの動作だけ。順番に積めば、来週から毎日5分で営業の状況がつかめる状態になります(5分は本当に5分で、コーヒー1杯ぶんあれば足ります)。
Step 1:顧客リストと案件状態を1枚で見える化する
最初にやることは、「今、関わっている会社」を1枚のシートに書き出すことだけ。スプレッドシートでもNotionのテーブルでもよく、最初は紙のノートでも構いません(あとで移行します)。
これを最初にやらないとどうなるか
「ヒアリングまで進んでいたあの会社、どこまで話したっけ」と、ふと思い出せない瞬間が増えていきます。記憶に頼る営業は、人数が増えても増えなくても、情報が頭の中にしかないので、自分以外の誰かに渡すのが難しいという共通の弱点があります。
たとえば自分が体調を崩して一日休む、というだけでも、進行中の会社の状況がチームから一時的に見えなくなる——というのは、小さな組織でよく起きる出来事です(誰かが悪いというより、仕組みが追いついていないだけ)。
シートの最低限カラム
最初は次の6つだけで十分です(迷ったら、もっと減らしても構いません)。
| 列名 | 中身の例 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社○○ |
| 担当者 | 山田様 |
| きっかけ | 紹介/問い合わせ/展示会 |
| 状態 | 初回連絡前/初回面談済/提案中/受注/失注 |
| 最終接点 | 4/28 メールで提案書送付 |
| 金額感 | 30万円(仮) |
ポイントは、状態の選択肢を5つに絞ること。「ヒアリング2回目」「課題整理中」など細かく分けると、書く側が迷ってシートが埋まらなくなります。最初は粗くていい、というより粗いほうがいい。
明日できる始め方
- スプレッドシートを新規作成して、上の6列をコピペする
- 名刺・メール・チャット履歴をたどって、ここ3ヶ月で関わった会社を最大20社書き出す
- それ以上ある場合も、20社で一度区切る(多いと続かないので)
20社が多いと感じるなら、直近1ヶ月の10社でも構いません。網羅性より、まず1枚に集めることが目的です。
続けるコツ
新しい会社と話したら、その日のうちに1行追加するだけ。商談後にメモを書く習慣がない方は、「最終接点」列だけ更新するルールから始めると、無理なく続けられます。文章メモは後回しで構いません。会社名と日付さえ残っていれば、あとから記憶をたどれます(最初は本当にこの2項目だけで十分です)。
ここまでで「1枚化」は完了。すでに営業の見通しがだいぶ良くなっているはずです。
Step 2:「次の1手」と期日を決める
シートに並べたら、次は未来の動きを書き加えます。営業の管理がうまくいかない原因の多くは、過去の記録ばかりが残って、「次に自分が何をするか」が曖昧なまま放置されることにあります。
これを最初にやらないとどうなるか
ありがちなのが、「先方の返事待ち」のつもりで2週間が過ぎていた、というパターンです。実際は相手も「こちらからの追加情報を待っていた」というすれ違いも、決して珍しいケースではありません(双方が待っていて、誰も次の一歩を踏み出していない案件は、正直なところ想像より多いものです)。
「いつ・誰が・何をするか」をひと言だけでも書いておくと、こうした静かな停滞は確実に減らせます。
追加するカラム
Step 1のシートに2列だけ追加します。
| 列名 | 中身の例 |
|---|---|
| 次の1手 | 提案書の修正版を送る/電話で進捗確認/日程候補を再提示 |
| 期日 | 5/14(水) |
たったこれだけ。2列でいいのは、書く側の負担を下げるためです。詳細な議事録は別ドキュメントでも構いません。シートで管理するのは、「動きを止めないための最低限の情報」です。
期日の決め方
迷ったら次のルールでOKです。
- 相手から返信待ち → 3営業日後に進捗確認を入れる
- 提案書を出した直後 → 5営業日後に感触確認
- 紹介をもらった直後 → 2営業日以内に初回連絡
- 失注理由が「タイミングではない」 → 3ヶ月後に再アプローチをセット
ぴったり合っている必要はなく、何かしら期日が入っていれば未来の自分を動かせる——ここが一番大事なポイントです。逆に、期日のない案件は意識から自然と外れていきやすい、というのは多くの方が実感されているのではないでしょうか(つまり、期日は「未来の自分への申し送り」だと考えると気が楽になります)。
明日できる始め方
シートを開いて、各案件の「次の1手」と「期日」を1行ずつ埋めていきます。20社あっても、1社あたり30秒ほどで書けるので、合計でおよそ10分。朝のコーヒーを飲み終わる前に十分終わる量です。
続けるコツ
商談・メール・電話のあとに、その場でシートを開いて期日を1つだけ書く。ルールはこれだけで十分です。「メモは後で」となった案件は、後回しになりがち——というのは誰にでも起きることなので、ブラウザのタブにシートを固定して、自然に視界へ入るようにしておくと続けやすくなります。
ここまで進めば、「自分が何をいつやるか」が1枚で見えるようになっています。あとは、見直す習慣をつけるだけです。
Step 3:週1回、5分の振り返りを習慣にする
最後のステップは、週1回、シートを上から下まで眺める時間を取ること。たった5分でいいので、これを毎週同じ曜日・同じ時間に置きます。
これを最初にやらないとどうなるか
シートはあるのに、書き込むだけで見直さない状態になりがちです。記録は溜まっていくのに、判断材料として使う機会がない——というのは、家計簿アプリで「入力はしたけれど開かなくなった」という状況に近いかもしれません。営業の数字も、見直す時間がセットになって初めて意味を持ちます。
振り返りでやること(5分でできる)
PDCAのような重い儀式ではなく、チェックする観点は3つだけです。
- 期日が過ぎているのに動いていない案件はないか(1分)
- 2週間以上、最終接点が更新されていない案件はないか(2分)
- 状態が「提案中」のまま動かない案件が3社以上ないか(2分)
該当があれば、その場で次の1手と期日を書き直します。シートの該当行に色をつける、コメントで一言残す、付箋を貼る——どんな印付け方でも構いません。「来週の自分が見たときに、ここを見ればいいとすぐ分かる」状態にしておくのが目的です。
振り返りの時間を決める
おすすめは、月曜の午前か金曜の夕方です。
- 月曜午前:1週間の動きを設計してから走り出せる
- 金曜夕方:今週やり残したことを来週に送り、頭を空にして週末に入れる
playparkでは金曜の夕方を選んでいます。週末を挟む前に頭を一度整理できるほうが、月曜にスッと走り出しやすい——という、ごく個人的な実感ベースです(このあたりは合う合わないがあるので、最初の数週間はどちらも試してみてください)。
明日できる始め方
カレンダーに「営業ふりかえり 5分」という予定を毎週繰り返しで入れます。会議室を取る必要も、誰かと一緒にやる必要もありません。自分との約束を可視化するだけで、実行率は明らかに上がります。
続けるコツ
最初の1〜2ヶ月は、「シートを開けたら成功」くらいのハードルで十分です。改善案を出そう、戦略を立てよう、と最初から意気込むと長続きしません。続けるうちに、自然と「あれ、ここで止まりがちだな」「最近この層からの問い合わせが増えてきたな」という気づきがあとから生まれてきます——焦らずそこまで待つのがコツです。
3ステップの全体像
3つを並べると次のようになります。
| ステップ | 主な動作 | かかる時間 | 続けるコツ |
|---|---|---|---|
| Step 1:1枚に集める | 6カラムのシートに直近20社を書き出す | 初回30分 | 商談ごとに1行追加 |
| Step 2:次の1手と期日 | 2カラム追加して未来の動きを書く | 初回10分 | 商談直後にその場で書く |
| Step 3:週1回の振り返り | シートを5分眺めて停滞を見つける | 毎週5分 | 同じ曜日・同じ時間に固定 |
完成形ではなく、入口から定着までの最短ルートです。慣れてきたら、案件の優先度・受注確度・売上見込みなど、列をあとから足していけば、自然に立派な営業管理シートに育っていきます。逆に言えば、この3ステップが回り始める前に高機能ツールを入れても、形は整いますが中身が育つまでに時間がかかる、ということでもあります。
よくあるつまずきと、その対処
| つまずき | 起きやすいタイミング | 対処 |
|---|---|---|
| 列を増やしすぎて埋まらなくなる | Step 1の翌週 | 6カラムに戻す。詳細メモは別ドキュメントへ逃がす |
| 期日を決めるのが面倒で空欄が増える | Step 2の2〜3週目 | 「3営業日後」「5営業日後」のテンプレでとにかく置く |
| 振り返りが続かない | Step 3の3週目 | 5分のままでOK。短くても、開けたら勝ち |
| 案件が増えてシートが見にくい | 数ヶ月後 | フィルタ機能で「状態≠失注」だけ表示する |
| 担当者引き継ぎが心配 | 人が増える前 | シートのURLと運用ルールを社内ドキュメントに貼っておく |
つまずきの多くは、ご自身のせいでも仕組みのせいでもなく、「最初に決めた粒度が、いまの自分たちに合っていない」だけであることがほとんどです。最初は粗く、慣れたら少しずつ細かく——を原則にすると、続けやすくなります。
ツールの選び方:始めるなら無料で十分
「いつかCRMを入れたい」と思っていても、最初から有料ツールを選ぶ必要はありません。1〜5名の規模なら、次の順番で十分まわります。
| 段階 | おすすめツール | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 立ち上げ期(〜半年) | Google スプレッドシート / Microsoft Excel / Numbers | 無料 |
| 整理が進んだ段階 | Notion / Airtable のテーブル | 無料〜数千円 |
| 5名以上・複数拠点 | HubSpot Free / Zoho CRM Free などの無料CRM | 無料〜(必要機能で課金) |
| 売上規模が拡大 | Salesforce / kintone などの有料SFA・CRM | 1ユーザーあたり数千円〜(公式サイトの最新料金を要確認) |
最初から段階4を目指さないのがコツです。スプレッドシートで3ヶ月ほど運用してみて、「自分たちが何を見たいか」「どこが手間か」が見えてきてから上の段階に進むと、ツール選定の解像度が一段上がります。逆に、最初に高機能ツールへ飛び込んでしまうと、自分たちの運用と機能のミスマッチに気づくのに時間がかかってしまいます。
playparkも2人で営業をしていますが、いまだに核となるのはテキストとシートに近い構造です。高度な仕組みよりも、続いている仕組みのほうが、結果として成果につながりやすいと感じています。
まとめ:今週、できることから1つ
長く書きましたが、結論はシンプルです。
- Step 1:1枚のシートに直近20社を書く(初回30分)
- Step 2:次の1手と期日の2列を加える(初回10分)
- Step 3:週1回・5分の振り返りを固定する(毎週5分)
すべてを今日やる必要はありません。今週やるのはStep 1だけでも、来月にはシートを見る習慣ができているはずです。営業管理は「立派にやる」ものではなく、「続けられる形に小さくする」のが本質です。
3ステップが回り始めて、もう一段先の運用設計に興味が湧いてきた段階では、playparkが少人数で実践している少人数チームの営業運用の作り方もあわせてご覧ください。スプレッドシートを土台にしたまま、どこまで仕組み化できるかの参考になります。
最初の一歩は、新規スプレッドシートを開いて6カラムを書き写すところから。そこさえ乗り越えれば、あとは半年後の自分が「あのとき始めておいてよかった」と思える側にまわれます。
完璧な仕組みを目指す前に、まずは今週Step 1から始めてみませんか?運用しながら自社に合う形を一緒に整理していくほうが、結果として長く続きます。



